引退競走馬の現状と課題
毎年の引退競走馬の数とその背景

日本では毎年約7,000頭のサラブレッドが競走馬として生産されている が、これらの馬が引退後に直面する問題は深刻である。
認定NPO法人引退馬協会の調査によると、競走馬として活躍するのは生まれてから2歳から長くて7~8年間という短期間にすぎない。
株式会社TCC Japan代表取締役の山本高之氏によれば、日本中央競馬会(JRA)に在籍する競走馬だけでも約5,000頭が毎年引退している状況にある。
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一般財団法人Thoroughbred Aftercare and Welfare(TAW)の統計データ(2015年)では、JRAと地方競馬(NAR)を合わせて実質的に6,432頭が競走馬から引退している。
この数字の背景には、生産頭数に対して実際にデビューできる馬が約3割程度しかいないという現実があり、デビューできなかった馬や早期引退を余儀なくされる馬が多数存在しているということだ。
本記事では引退競走馬を取り巻くややセンシティブな話題を取り扱いますが、ウマロモでは馬の福祉と健康を最優先します。
引退の理由
引退競走馬の引退理由は多岐にわたる。最も多いのは競走成績の低迷による「能力の低下」で、レースでなかなか勝利を収められない馬が引退を余儀なくされるケースである。
(筆者が共同所有する馬も早期に引退した競走馬だが、競走馬時代の成績は奮わなかった)
次に多いのが怪我や病気による引退で、サラブレッドは体の構造が脆弱なため、骨折や屈腱炎などの脚の怪我が競走生命を絶つこともある。
興味深いことに、優秀な競走馬ほど若くして引退するケースも多い。これは価値のある血統を後世に残すため、繁殖入りを目的とした戦略的引退である。
しかし、繁殖入りが引退理由となる馬はほんの一握りにすぎず、多くの馬は3歳や4歳という若い年齢で引退を迎えている。
競馬業界の変化とトレンドの影響
引退競走馬を取り巻く環境は近年大きく変化している。2017年にJRAが「引退競走馬に関する検討委員会」を立ち上げ、競馬サークル全体で問題意識を共有し始めた。
この動きから2024年の一般財団法人TAWの設立へと発展し、引退競走馬の利活用促進や養老・余生の機会拡充に専門的に取り組む体制が整った。
競馬業界全体でも引退馬の行き先について知りたい、考えたいという声が日常的に聞かれるようになり、かつてタブーとされていた引退後の追跡調査への関心が高まっている。
一方で、乗馬需要の拡大が引退馬の受け皿拡充の鍵となっているが、現在登録されている乗用馬は約15,000頭にとどまり、年間生産数を大きく下回っている。
引退後の競走馬が直面する問題
引退後の競走馬が直面する問題は複雑かつ深刻である。最大の課題は経済的負担で、馬を牧場や乗馬クラブに預ける預託料は月額10~15万円が相場となっており、馬の寿命が30年程度であることを考慮すると、数千万円の費用が必要となる。
生活環境の面では、競走馬から乗用馬への転用には3か月から12か月間のリトレーニングが必要 で、この期間中の場所と費用確保が大きな課題となっている。 Furusato TaxFurusato-kibichuoが栃木県宇都宮市に開設した一時預かり施設 JRAも、馬房数の制限により受け入れ頭数に上限がある状況だ。
最も深刻な問題は、多くの引退競走馬が「行方不明」となってしまうことである。
Thankshorseplatform引退馬協会によると、競走生活を引退した多くの馬が次の馬生に進むことができず、肥育・殺処分となる馬が少なくない現実がある。支援制度については、JRAの引退競走馬杯(RRC)や活動奨励金制度などが整備されつつあるが、全体的な支援体制はまだ発展途上にある。
この現状を受けて、引退競走馬の「セカンドキャリア促進」と「養老・余生環境の整備」を両輪とした取り組みが求められており、競馬業界全体での継続的な支援体制の構築が急務となっている。
参考情報源: JRA引退競走馬への取組み https://jra.jp/company/social/hretirement/
第2章 引退競走馬のセカンドキャリア

引退競走馬が選ぶ道は多様化している。主要な選択肢として、乗馬クラブでの乗用馬、馬術競技馬、セラピーホース、繁殖馬がある。
乗用馬への転用は最も一般的で、リトレーニングにより競走から乗馬への適応を図る。 利点は長期間の活動が可能な点だが、月額10-15万円の預託料が課題となる。
馬術競技馬は運動能力を活かせるが、高い技術習得が必要。セラピーホースは人との信頼関係構築能力を活用でき、社会貢献性が高い。
競走馬の個性や特性に基づいた最適な選択が重要である。気性が穏やかな馬は乗用馬やセラピーホースに適し、運動能力の高い馬は競技馬として活躍できる。競走で培った体力と人との信頼関係は大きな財産となる。
セカンドキャリアの成功事例として、エアソミュールが挙げられる。毎日王冠勝ち馬で獲得賞金3億円を超える同馬は、引退後にリトレーニングを受け、現在は障害飛越競技馬として活躍している。
TCC引退競走馬ファンクラブの支援を受け、「引退馬の森」で学生との乗馬レッスンに従事。 成功要因は持ち前の気の強さと運動能力の活用、そして継続的なサポート体制である。
また、RRC(引退競走馬杯)では、2018年有馬記念勝ち馬ブラストワンピースが馬場馬術で活躍するなど、多くの元競走馬がセカンドキャリアで輝いている。
日本中央競馬会(JRA)は2017年に「引退競走馬に関する検討委員会」を設置し、2024年には一般財団法人TAW(Thoroughbred Aftercare and Welfare)が専門機関として設立された。
この事業では引退競走馬の養老・余生支援、リトレーニング技術の研究・普及を行っている。 NPO法人吉備高原サラブリトレーニングは50頭超のサラブレッドをセカンドキャリアに繋げる実績を持つ。
これらの取組みにより、引退競走馬の多様な活躍の場が拡大し、持続可能な支援体制の構築が進んでいる。
出典: https://jra.jp/company/social/hretirement/(JRA公式サイト)
第3章 引退競走馬を支援する方法
引退競走馬への支援は、個人から企業まで様々な方法で参加することができます。多くの人々が連携することで、一頭でも多くの馬の充実した馬生を支えることが可能になります。
個人ができる支援活動
個人による支援の最も代表的な方法は寄付です。 Umas!認定NPO法人引退馬協会(RHA)やNPO法人サラブリトレーニング・ジャパンなど、多くの団体が寄付を受け付けており、税制優遇措置も受けられる。
特に注目すべきは「フォスターペアレント制度」で、特定の馬の里親となり月々の飼育費を支えることができる。
また、会員制度への参加も重要な支援方法である。月会費や年会費を通じて団体の運営を支える一般会員や、費用負担のない賛助会員制度も。
Umas!TCC引退競走馬ファンクラブでは、ホースシェルターサポーター(月3,500円)やホースサポーター(月500円)など、様々な参加レベルが用意されている。
ボランティア活動では、イベント運営の手伝いや馬のケア、広報活動への参加が可能だ。
さらに、グッズ購入や物資提供といった地域レベルの活動も大きな支援となっている。 近年はSNSでの情報拡散やふるさと納税を活用したオンライン支援も広がりをみせている。
団体や企業支援の重要性
団体支援において中核的な役割を果たすのは、2024年に設立された一般財団法人Thoroughbred Aftercare and Welfare(TAW)だ。
JRAの「引退競走馬に関する検討委員会」の方針を踏まえ、中央競馬・地方競馬、馬主、生産者、厩舎関係者が協力して設立された。TAWは引退競走馬の一時預入れ施設を栃木県宇都宮市に開設し、セカンドキャリア促進に取り組んでいる。
企業支援は社会全体への意識向上に大きな影響を与える。企業のCSR活動として、寄付型自販機の設置、商品やイベントのコラボレーション、SNSでの共同キャンペーンなどが展開され、引退競走馬問題の認知度向上に貢献している。
これらの活動により、年間約7,000頭が生産される競走馬のうち、現役引退後の多くが殺処分されているという現実が広く知られるようになりました。
JRAの活動奨励金交付事業では、3年以上継続して養老・余生支援を行う団体への支援が実施され、引退競走馬を取り巻く環境の改善・向上が図られています。
また、引退競走馬杯(RRC)のような競技会開催により、セカンドキャリアとしての馬術競技への転用促進も積極的に進められています。
これらの多層的な支援体制により、引退競走馬の問題は単なる動物愛護の問題を超え、社会全体で取り組むべき課題として認識され、持続可能な解決策の構築が進められています。
認定NPO法人引退馬協会 https://rha.or.jp/index.html
第4章 引退競走馬のための法律と制度
引退競走馬に関する法律の概要
引退競走馬を取り巻く法的枠組みは、主に競馬法(昭和23年法律第158号)と動物愛護管理法によって構成されている。 JRA競馬法第1条では「競馬の健全な発展をはかって馬の改良増殖その他畜産の振興に寄与すること」を基本目的として掲げ、農林水産省が主務官庁として馬の福祉向上に責任を持つ構造となっている。
競走馬は動物愛護管理法において「畜産農業に係る動物」(法第10条第1項)として位置づけられ、現役時代は動物取扱業の適用外とされている。
しかし、引退後に牧場等でふれあい事業を行う場合は、環境省の通知(平成26年1月7日)により第二種動物取扱業の展示業に該当する可能性がある。これにより、引退馬を扱う施設には適切な飼養管理基準の遵守が法的に義務づけられ、馬の権利保護が制度的に担保されている。
具体的には、牧場経営者は馬の健康管理、適切な飼育環境の提供、定期的な獣医師による健康チェックなどを実施する法的責任を負う。
この法的枠組みにより、引退競走馬が人道的な環境で余生を送る権利が法的に保障されており、牧場との関係においても所有者・管理者双方に明確な責任が課せられている。
制度を活用した支援の実例

JRAでは2017年に「引退競走馬に関する検討委員会」を設立し、農林水産省、中央競馬、地方競馬、生産者代表で構成される包括的な支援体制を構築した。 この委員会の成果として、2024年には専門機関「(TAW)」が設立され、引退競走馬支援の制度化が大幅に進展した。
TAWが運営する具体的支援方法には、栃木県宇都宮市の旧競走馬総合研究所を活用した「一時預入れ施設」がある。 JRAこの施設では引退競走馬のセカンドキャリア促進を目的とし、乗用馬への転用に向けたリトレーニングサービスを提供している。
また、「養老奨励金交付事業」では、引退競走馬の養老・余生等に関わる活動を3年以上継続している団体に対し、書類調査と実地調査を経て活動奨励金を交付している。
地方競馬全国協会も独自の支援制度を展開し、地方競馬教養センターでの人材育成事業と連携した引退馬支援を行っている。
成功事例として注目されるのが「引退競走馬杯(RRC)」である。2018年から開始されたこの引退競走馬限定の馬術競技会は、障害馬術、馬場馬術、総合馬術、TRECの4種目で実施され、競技成績に応じた飼育奨励金も交付される。
JRA公益社団法人全国乗馬倶楽部振興協会の支援により、既に多数の引退競走馬が馬術競技馬として成功を収めている。
さらに、「功労馬支援事業」では1996年から重賞優勝馬など競馬界への貢献が顕著な馬に対する長期的支援を継続し、現在は公益財団法人ジャパン・スタッドブック・インターナショナルが事業を承継している。
これらの制度により、多くの引退競走馬が安心して余生を送れる環境が法的・制度的に整備されており、馬の福祉向上と競馬産業の持続的発展の両立が図られている。
参考文献: JRA公式サイト「引退競走馬への取組み」
https://jra.jp/company/social/hretirement/
第5章 引退競走馬の里親制度
里親制度の仕組みとメリット

引退競走馬の里親制度は、一頭の馬をたくさんの人で支える共同支援システムである。」は、この分野のパイオニアとして知られている。 同協会では、月額1,000円の会費と維持管理費(0.5口2,000円/月から)で、好きな引退馬の「里親」の一人になることができる。
NPO法人ホーストラストでは「トラストスポンサー制度」を運営しており、月額42,000円の預託料を14口に分けて1口3,000円を複数の人に負担してもらう里親制度を実施している。
これらの制度により、里親になる方たちは馬との触れ合いを通じて温もりを感じ、充実した毎日を過ごすことができるという大きなメリットがある。
里親になるためのステップ
里親になるための手続きは比較的簡単だ。引退馬協会の場合、まずオンライン入会フォームから申し込みを行い、必要事項を入力して送信します。その後、口座引落しの申し込み用紙を返送し、払い込みが確認できしだい手続きが完了となる
注意点として、引退競走馬の里親制度は直接馬を引き取る制度ではなく、複数の支援者で馬の維持費を支える仕組みであることを理解する必要がある。
里親には定期的な馬の近況報告が送られ、事前予約により牧場での面会も可能。 まず各団体のホームページで制度の詳細を確認し、さらに活動実績や馬が適切な環境で飼育されているか確認、(難しい点ではあるが)自分の経済状況に合った支援レベルを選択することが重要。
具体例と成功事例
認定NPO法人引退馬協会では、これまで多数のフォスターホースを支援しており、「フォスターホースだより」を通じて定期的に馬たちの様子を報告している。
NPO法人吉備高原サラブリトレーニングのサンクスホースプロジェクトでは、2,000名以上の支援者により50頭を超えるサラブレッドをセカンドキャリアに繋げることに成功しています。
毎年約7,000頭の馬が競走馬として生産される中、これらの里親制度は一頭でも多くの引退競走馬に安定した馬生を提供する重要な役割を果たしています。
支援者からは「馬を思い、馬に癒やされ、充実した毎日を過ごすことができる」という体験談が寄せられており、人と馬の双方にとって有意義な制度として案内されています。
参考情報: 認定NPO法人引退馬協会(https://rha.or.jp/index.html)
第6章 引退競走馬の健康管理
引退競走馬が第二の人生を安心して送るためには、適切な健康管理が不可欠である。競走馬のピークは5歳前後とされる一方で、乗用馬として精神的に安定した15歳から20歳頃が最も適した時期とされており、引退後もまだまだ活躍できる期間が長く残されている。
しかし、トップアスリートとしての過酷な競走生活から転換期を迎える引退馬には、専門的で継続的な健康管理が求められる。
引退後の健康維持のポイント
適切な食事管理
引退競走馬の健康維持において、食事管理は最も重要な要素の一つである。
競走馬時代の高エネルギー食から、乗用馬や養老馬に適した食事への転換が必要となる。JRAファシリティーズの専門家によると、引退馬の基本的な給餌は、体重450kgの馬で乾草チモシー10-11kg/日を基準とし、個体の状態に応じて調整することが推奨されている。
食事管理では、疝痛(腹痛)の予防が特に重要だ。急激な食事変更は避け、段階的に新しい飼料に慣らしていく必要がある。
また、馬の消化器系は非常にデリケートであるため、飼料の品質管理と規則正しい給餌時間の維持が欠かせない。 引退馬協会の専門家は、馬の顎の張りが食欲の良い指標となることを指摘しており、日常的な観察による早期の変化発見が重要としている。
定期的な運動プログラム
引退後の馬にとって、適度な運動は筋力維持と精神的健康の両面で重要だ。
JRAが開発したリトレーニングプログラムでは、引退直後の馬は心身ともに張り詰めた状態にあるため、まず2-4週間のリフレッシュ期間を設けることが推奨されている。この期間中は広大な放牧地での昼夜放牧を行い、競走馬時代のストレスから解放させることが求められる。
その後、段階的に運動強度を調整していきます。日常的には1.5km程度の引馬から始め、馬の体調と適性に応じて運動内容を調整する。
運動器疾患を抱える馬には、専門獣医師の指導の下で適切な治療と休養を与えながら、無理のない範囲での運動を継続することが大切だ。
健康チェックの実施
引退馬の健康状態を把握するための日常的な観察は、健康管理の基礎となる。
馬の生理的基準値として、成馬の平熱は37.5-38.0℃、心拍数は28-36回/分とされています。これらの数値は、競走馬がトップアスリートとして鍛えられるほど安定した低い値を示すため、日常的な測定による変化の把握が重要だ。
毎日の健康チェックでは、食欲、飲水量、排泄の状況、歩様の観察を行う。特に、食欲不振や水分摂取量の減少は体調不良の初期症状として注意深く観察する必要がある。また、馬房での休息姿勢や行動パターンの変化も重要な健康指標となる
専門家による健康管理の重要性
獣医師との連携
引退競走馬の健康管理において、獣医師との定期的な相談は不可欠である。
日本の競馬界では、JRAをはじめとする各機関に多数の専門獣医師が在籍しており、競走馬の健康管理に関する豊富な知識と経験を有している。これらの専門家は、競走馬時代からのカルテを基に、個々の馬の特性と既往歴を考慮した健康管理プランを提案できる。
農林水産省が定める飼養衛生管理基準では、馬の健康管理に関する詳細なガイドラインが設けられており、定期的な健康診断の実施が推奨されている。
引退馬協会の活動でも、獣医師、馬の健康アドバイザー、乗馬インストラクターなど専門知識を有する人材による講習会が定期的に開催されており、適切な健康管理技術の普及に努めている。
健康管理プランと定期フォローアップ
各馬の個性と状態に応じた健康管理プランの策定は、専門獣医師の重要な役割だ。競走馬として活躍していた馬は、個々に異なる運動器疾患や既往歴を持つため、画一的な管理ではなく、個別化されたアプローチが必要となる。
定期的なフォローアップでは、血液検査、エコー検査、歩様検査などを通じて、馬の健康状態を科学的に評価する。特に、引退直後は競走馬時代の疲労蓄積や隠れた疾患が表面化する可能性があるため、より頻繁な健康チェックが推奨される。
引退競走馬の健康管理は、単なる延命措置ではなく、質の高い第二の人生を提供するための積極的な取り組みである。専門家との連携により、一頭一頭の馬が安心して余生を過ごせる環境を整備することが、現代の馬事業界における重要な責務といえるだろう。
参考情報源: JRAファシリティーズ株式会社「愛馬の食事・カウンセリングルーム」(https://www.jra-f.co.jp/counselings)
第7章 引退競走馬のコミュニティとイベント
引退競走馬の支援において、コミュニティとイベントは馬と人をつなぐ重要な役割を果たしている。これらの活動は、競馬ファンと引退馬の絆を深めるだけでなく、持続可能な支援システムの構築にも貢献している。
多様なイベントによる支援の輪

日本国内では、引退競走馬を支える様々なイベントが定期的に開催されている。認定NPO法人引退馬協会では、「フォスターホースと過ごす日」を千葉県と北海道で定期開催し、会員が実際に引退馬とふれあう機会を提供している。
このイベントでは、騎乗体験やグルーミング(手入れ)を通じて、 馬の温もりや生命力を直接感じることができる。
TCC引退競走馬ファンクラブでは、「美浦村 UMA フェスタ」への出展や「馬に会いに行くツアー」など、地域と連携したイベントを積極的に開催を行なっている。
これらの乗馬体験イベントは、競馬ファンだけでなく一般の人々にも引退馬の魅力を紹介し、支援の輪を広げる重要な役割を担っているのだ。
特に注目すべきは「RRC(Retired Racehorse Cup・引退競走馬杯)」で、2018年から全国乗馬倶楽部振興協会が主催する引退競走馬限定の馬術競技会である。
毎年全国各地で予選が行われ、JRA馬事公苑でのファイナル大会では、障害馬術、馬場馬術、総合馬術の3部門で元競走馬たちが新たな舞台で活躍する姿を見ることができる。
このイベントは引退馬のセカンドキャリアを広く社会に紹介する絶好の機会となっている。
コミュニティの重要性と参加方法
引退競走馬を支えるコミュニティは、継続的な支援の基盤として機能している。会員制度を通じて、支援者と馬との長期的な関係性を構築し、安定した資金調達を可能にしている。
引退馬協会では、会員になることで牧場見学権利やイベント参加資格を得られるほか、会報を通じて担当馬の近況を知ることができる。
会員限定の北海道・鹿児島ツアーなど、特別な体験も用意されており、積極的参加によって馬との絆を深められる仕組みが整っている。
TCCでは、ファンクラブ活動として「オーナー制度」「シェルターサポーター」「ホースサポーター」など、支援者の関与度に応じた多様な参加方法を提供している。月額500円からの気軽な支援から、馬の実質的なオーナーとなる本格的な関与まで、個人の状況に合わせた選択が可能である。会員には全国の提携施設での乗馬や月次レポート、専用コミュニティへのアクセスなど、豊富な特典が用意されている。
これらのコミュニティ活動は、物資支援やボランティア参加の機会も提供しており、多角的なアプローチで引退馬の福祉向上に貢献している。イベントを通じた啓発活動と会員制度による継続的支援の組み合わせが、引退競走馬の明るい未来を支える重要な社会基盤となっている。
参考: 認定NPO法人引退馬協会公式サイト(https://rha.or.jp/project/fureai.html)
まとめ

引退競走馬を取り巻く環境は、かつてタブー視されていた時代から大きく変化し、社会全体で取り組むべき重要な課題として認識されるようになった。
年間約7,000頭が生産される競走馬のうち、多くが引退後の行き先に困っている現状に対し、JRAを中心とした業界全体での取り組み、NPO法人や支援団体による草の根活動、そして個人支援者による献身的な支援が、着実に状況を改善している。
法制度の整備、セカンドキャリアの多様化、里親制度の充実、専門的な健康管理体制の確立、そしてコミュニティとイベントを通じた社会的認知度の向上により、引退競走馬の未来は明るくなりつつあると言えるだろう。
しかし、まだ多くの課題が残されており、継続的な支援と社会全体での意識改革が必要です。
一頭でも多くの引退競走馬が、競走生活を終えた後も尊厳ある第二の人生を送れるよう、私たち一人ひとりができることから始めることが重要だ。
それは寄付かもしれない。ボランティア参加かもしれない。あるいは、この問題について周りの人に伝えることから始まるかもしれない。
引退競走馬の問題は、単なる動物愛護の問題ではなく、私たちの社会がどのような価値観を持ち、どのような未来を築いていくかという根本的な問いかけでもああるだろう。
競馬という文化を持続可能なものとして次世代に引き継ぐためにも、引退競走馬への支援は欠かせない取り組みなのだ。


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