ゴールドシップとは?伝説の奇行で知られる芦毛の怪物馬の全貌

ゴールドシップ 競馬

2009年生まれの競走馬ゴールドシップは、GI6勝を挙げた名馬でありながら、その破天荒な気性と予測不能な行動で競馬ファンを魅了し続けた存在です。通算成績は28戦13勝、獲得賞金は13億9,776万円に達し、芦毛馬としては最多のGI勝利数と獲得賞金を記録しました。

父ステイゴールド、母ポイントフラッグ、母父メジロマックイーンという血統は「ステマ配合(黄金配合)」と呼ばれ、この配合からはドリームジャーニーやオルフェーヴルといった名馬も輩出されています。体高が高く500kgを超える大型馬で、芦毛特有の白い毛色と、つぶらな瞳が印象的でした。

競走馬としての実力は疑いようがなく、皐月賞・菊花賞・有馬記念・宝塚記念2回・天皇賞春と、4年連続でGI勝利を挙げる偉業を達成しています。

調教では気分が乗らなければ全く走らず、レースでも単勝1倍台の圧倒的1番人気で5回敗北するなど、その気分屋ぶりは競馬界に新たな伝説を刻んでいます。

ゴールドシップの血統背景と配合の妙

ゴールドシップ血統図

ゴールドシップの血統は、競馬界で「ステマ配合」として知られる理想的な組み合わせです。父ステイゴールドは晩成型の名馬で、自身も香港ヴァーズを制した実力馬でした。母父メジロマックイーンは天皇賞春連覇を達成した名ステイヤーで、この組み合わせは長距離適性と底力を兼ね備えた産駒を生み出す傾向があります。

同じステマ配合からは、ドリームジャーニーがGI3勝、オルフェーヴルが三冠馬となりGI6勝と凱旋門賞2着2回という実績を残しています。

この配合の成功率の高さは、スタミナと瞬発力を高次元で融合させる点にあります。ステイゴールド産駒特有の気性の激しさも受け継ぎましたが、それ以上に競走能力の高さが際立っていました。

は中央競馬で2勝を挙げた実績馬で、繁殖牝馬としてもゴールドシップという大物を送り出しました。この血統背景が、ゴールドシップの長距離適性と底力、そして独特の気性を形作る基盤となったのです。

気性の激しさと予測不能な行動パターン

ゴールドシップの最大の特徴は、その予測不能な気性にありました。函館でのデビュー当初から他馬を蹴りに行く行動が目立ち、調教中も神経質で他馬を警戒しながら歩く様子が観察されていました。

担当厩務員の今浪隆利氏は「3歳春までは厩舎まわりで運動できたが、4歳になるととてもできない」と語っており、成長とともに気性の激しさが増していったことが分かります。

須貝尚介調教師との関係も独特で、馬とのふれあいを大切にする調教師の肩に噛みつき、痣を作ったりシャツを破いたりすることが度々ありました。レース前後や調教中に立ち上がったり、今浪厩務員を引きずったりする場面は、競馬場で頻繁に目撃され、周囲の注目を集めました。

https://x.com/spookies12/status/1370962128765554688?s=20

調教では気分が乗らなければ全く走らず、近くにいる馬を威嚇することも日常茶飯事でした。トーセンジョーダンを見かけると蹴りに行き、同じステイゴールド産駒のフェノーメノに対しては「白黒つけてやろうか」と言わんばかりに威嚇する場面も記録されています。

遊んでくれる人がいないと暴れる一方で、今浪厩務員には甘える姿も見せるなど、その行動は一貫性がなく予測困難でした。

ゲート入りを巡る数々のエピソード

ゴールドシップのゲート入りを巡る逸話は、競馬ファンの間で語り草となっています。2015年の天皇賞春では、ゲートを嫌がり約5分間もゲート入りを拒否しました。関係者が説得を続けた末、ようやくゲートに入りましたが、スタート時には出遅れることなく発走しています。対照的に2014年の天皇賞春では、落ち着いた様子でゲートに入ったにもかかわらず、ゲート内ではフェノーメノに対して威嚇の咆哮。さらぶスタートで大きく出遅れるという予想外の展開を見せました。同じレースでも毎回異なる反応を示すこの不可解な行動が、ゴールドシップの予測不能さを象徴しています。

2015年宝塚記念では3連覇がかかり、単勝1.9倍の圧倒的1番人気に支持されていました。しかしゲート入りで暴れ、スタート直後に立ち上がって大きく出遅れ、結果は15着と惨敗しました。このレースは、ゴールドシップの気分次第で結果が大きく変わる典型例として記憶されています。

横山典弘騎手との2014年宝塚記念

2014年宝塚記念で初めてゴールドシップに騎乗した横山典弘騎手は、レース前にこの馬の特異性について率直なコメントを残しています。

「最初は怖い馬と聞いていたが、怖いというより何するか分からないという感じ」「まともに走ってくれればすごい能力がある」と語り、騎乗に際しての心境を「ゴールドシップ様、お願いですから走ってください」という気持ちで臨んだと明かしました。

ベテラン騎手である横山典弘をして「お願いする立場」に置くゴールドシップの存在感は、競馬界でも異例でした。「とても賢い馬です。騎手を試しているみたいな感じ」「気分を害さないために鞭は入れない」という騎乗方針は、通常の競走馬とは全く異なるアプローチが必要だったことを示しています。

この宝塚記念では、横山騎手の慎重な騎乗が功を奏し、ゴールドシップは見事に勝利を収めました。騎手が馬の気分を最優先に考え、二段ロケット方式でのスパートを指示するという独特の戦略が、ゴールドシップの能力を最大限に引き出す鍵となったのです。

単勝1倍台の1番人気での成績

ゴールドシップの予測不能さは、馬券成績に如実に表れています。単勝1倍台の圧倒的1番人気に支持されたレースは通算10回ありましたが、そのうち5回しか勝利できず、3回は馬券圏外に敗れました。

通常、単勝1倍台の馬は実力が抜けており高確率で好走するものですが、ゴールドシップは気分次第で結果が大きく変動しました。

コスモス賞(1.2倍・1着)、菊花賞(1.4倍・1着)、阪神大賞典(1.1倍・1着)では圧勝しましたが、天皇賞春(1.3倍・5着)、京都大賞典(1.2倍・5着)、AJCC(1.3倍・7着)、宝塚記念(1.9倍・15着)では惨敗しています。札幌記念では1.8倍の1番人気で2着と好走しましたが、勝ちきれませんでした。

この不安定さが、ゴールドシップを「馬券の買い時が最も難しい馬」として競馬ファンに認識させました。実力は疑いようがないものの、やる気がある時とない時の落差が激しく、圧倒的1番人気でも油断できない存在でした。

それでも多くのファンが魅了されたのは、勝つ時の圧倒的な強さと、負ける時の潔さが共存していたからです。

主要GI勝利の軌跡

ゴールドシップのGI初制覇は2012年の皐月賞でした。前日から雨が降り馬場が荒れた中、多くの馬が外目の進路を選ぶ中、4コーナーでポッカリ空いた内を突いて鞍上の内田博幸騎手とともに快勝しました。

向正面では最後方を走っていたにもかかわらず、決着時には2馬身半の差をつける圧勝劇は、桁外れの脚力を証明。

続く菊花賞では舌を出しながら走るという独特のフォームで楽勝し、有馬記念も制して3歳時に3つのGIタイトルを獲得しました。年度代表馬はジェンティルドンナ(GI4勝)に譲りましたが、黄金の輝きを放つ活躍ぶりでした。

4歳時と5歳時には宝塚記念を連覇し、春の阪神大賞典も3連覇を達成しました。6歳時には「3度目の正直」で天皇賞春を制し、4年連続でGI勝利という偉業を成し遂げています。

長距離路線を中心に活躍し、勝つ時の鮮やかさ、芦毛という毛色、長い競走生活が相まって、多くのファンに愛されました

女性ファンを魅了した要素

ゴールドシップは現役時代から女性ファンが多い馬として知られていました。破天荒でどこか危険な香りがするオラオラ系でありながら、つぶらな瞳や変顔を見せるチャーミングな一面とのギャップが、女性の心を掴んだのだと思われます。

キメる時は格好よく決めるという、理想的な「悪い男」像を体現していたのです。

女性ファンの声として「急に走らなくなったり、暴れたりと危なっかしい印象を受ける。毎回レースの前はドキドキが止まらない。そこに母性本能をくすぐられるのか、『応援しなくちゃ!』となる。だからこそ、ちゃんと走ってくれると感動してしまう」という証言が残されています。

芦毛の馬は一般的に女性ファンが多い傾向がありますが、ゴールドシップはその中でも特に人気が高く、2010年以降の馬としては珍しいアイドルホース的な存在でした。

引退後の種牡馬生活

ゴールドシップ

https://www.keibalab.jp/column/interview/1584/ より

引退後、ゴールドシップはビッグレッドファームで種牡馬生活を送っています。現役時代の破天荒さとは対照的に、種付けにおいては非常に優秀な成績を残しています。

他の種牡馬が種付けに向かうのを見ると「俺もつれてけ」と言わんばかりに吠えるほど、種付けに対する意欲が旺盛です。

現役時代から女好きで知られ、調教中に近くにいた年下の牝馬を見て「調教どころじゃねぇ!」と興奮して立ち上がったエピソードも残っています。種牡馬としては牝馬を待たせない手際のよい種付けが評判で、寄り好みせずにどの馬にもスムーズに種付けを行っています

初年度から4年連続で受胎率94%超えを記録し、平均受胎率は97.1%に達しています。一般的な種牡馬の平均受胎率が70%程度であることを考えると、ゴールドシップの成績は驚異的です。同じステイゴールド産駒のドリームジャーニーが種付けが下手で知られるのとは対照的に、ゴールドシップは種付け名人のプレイボーイとして評価されています。

産駒の活躍状況

ゴールドシップの初年度産駒は2019年にデビューし、ブラックホールがG3レース・札幌2歳ステークスを制しました。種牡馬としてはそこそこの成績を収めており、今後さらなる活躍が期待されています。

父ステイゴールドから受け継いだスタミナと底力、母父メジロマックイーンからの長距離適性を兼ね備えた産駒が多く、中長距離路線での活躍が見込まれています。ゴールドシップ自身が持っていた瞬発力と末脚の切れ味を受け継ぐ産駒が現れれば、父と同様の活躍が期待できるでしょう。

気性面では父ほど激しくない産駒が多いようですが、それでもステイゴールド系特有の気性の難しさを受け継ぐ馬もいます。

種牡馬としての評価はまだ確立途上ですが、いつかゴールドシップのようなアイドル性と破天荒さ、そして底知れない実力を持つ後継者が現れることを、多くの競馬ファンが期待しています。

今浪隆利厩務員との特別な関係

今浪隆利厩務員とゴルシ

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BB%8A%E6%B5%AA%E9%9A%86%E5%88%A9 より

担当厩務員の今浪隆利氏とゴールドシップの関係は、馬と人間の理想的な絆を示すものでした。ヤンチャで気性の激しいゴールドシップでしたが、今浪さんには甘える姿を見せ、深い信頼関係を築いていました。須貝調教師や騎手に噛みついたり暴れたりする一方で、今浪さんの前では比較的おとなしくなることが多かったのです。

今浪さんは「3歳の春までは僕が乗って厩舎まわりで運動できたけど、4歳春時点ではとてもできません。曳き運動中も神経質で、他の馬を警戒しながら歩いてます」と語っており、ゴールドシップの成長とともに気性が激しくなっていく様子を間近で見守っていました。

引退後も今浪さんは北海道開催のたびにビッグレッドファームを訪れ、ゴールドシップと再会しています。現役時代に「ホンマよう面倒見てもろた」という関係が、引退後も変わらず続いていることは、競馬界でも美談として語り継がれています。馬と人間の絆の深さを示す、心温まるエピソードです。

須貝尚介調教師

須貝調教師は騎手時代からゴールドシップのオーナーである小林英一氏に可愛がられており、現役時代にゴールドシップの母ポイントフラッグにも騎乗していた縁があります。その流れでゴールドシップも須貝厩舎で管理されることになりました。

須貝厩舎での初めての重賞制覇がゴールドシップの共同通信杯、初めてのGI制覇もゴールドシップの皐月賞でした。皐月賞の返し馬を始めた時、須貝調教師の目には「この舞台によくぞ」と感激の涙があふれたと伝えられています。

ゴールドシップには蹴られたり噛みつかれたり散々ひどい目に遭わされている須貝尚介調教師ですが、そんなことも水に流して喜んだことでしょう。

ウマ娘プリティーダービーでの人気

ウマ娘のゴルシhttps://s.animeanime.jp/article/2021/11/05/65156.html より

スマートフォンゲーム「ウマ娘プリティーダービー」およびアニメ作品において、ゴールドシップは高い人気を誇るキャラクターです。破天荒な性格、気分屋な振る舞い、そして底知れない実力という現役時代の特徴が、美少女キャラクターとして見事に表現されています。

作中ではやる気がなかったり、トレーニング中に自由奔放に遊んでいる姿が描かれ、セグウェイで楽して移動するなど、気分屋なキャラクターが上手く表現されています。メジロマックイーンとの仲良し描写も多く、競馬的にはステマ配合の祖父と孫という関係性が、作品内では友人関係として描かれています。

担当厩務員の今浪さん自身もゲームをプレイしており、ゴールドシップ育成論を公開するなど、現実とゲームの世界が交錯する興味深い現象が起きています。ファンの間では「ゴルシ」の愛称で親しまれ、その予測不能な行動と圧倒的な実力のギャップが、ゲーム内でも再現されています。

競馬史に残るエンターテイナー

ゴールドシップは単なる強い馬ではなく、競馬界のエンターテイナーとして記憶されています。ジャパンカップの本馬場入場で観客に挨拶したり、ウイニングランを拒否したり、海外GI馬ジャスタウェイとは親友だったりと、競走以外の場面でも話題を提供し続けました。

遊んでくれる人がいないと暴れる、普段はヤンチャだが今浪厩務員には甘える、遊ぶとシャツを破いてくる、調教ではやる気が出ない、調教で近くにいる馬を威嚇する、トーセンジョーダンを見かけると蹴りに行くなど、数え切れないほどのエピソードが残されています。

これらの行動は決して悪意からではなく、ゴールドシップなりの表現方法だったのでしょう。賢い馬だからこそ、自分の意思を明確に示し、人間や他馬との関わり方を選んでいました。競馬ファンにとって、ゴールドシップのレースを見る楽しみは、単に勝敗を予想するだけでなく、「今日はどんな行動を見せてくれるのか」というエンターテインメント性にもありました。

ゴールドシップは競馬史に残る名馬であると同時に、競馬の楽しさを多くの人に伝えたアイドルホースでした。GI6勝という輝かしい実績と、数々の奇行や予測不能な行動が共存する唯一無二の存在として、今後も語り継がれていくでしょう

【出典】優駿|調教中でもレースの前後でも周囲の"注目"を浴びていた

 

 

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